タロットの本(1)
こうした仕事を長くやっていますと「タロットを学ぶのにはどんな本を読んだらいいですか?」という質問をよく受けます。とはいえ、個人的に聞かれたときに、その人に会わせていくつかの本をご紹介はできますが、一般的に、といわれるとなかなか大人の事情も絡んで難しいものです。そこで、今回から数回にわたって書評は別として、タロットの本について書いてみようと思います。そこから、本を選ぶときのヒントにしていただけたらと思います。
タロットはそもそもが外国のものなので、定評ある洋書を片っ端から呼んでいけば良いとも言えるのですが、意外とそこまでの英語力がない人は結構多いのでそういいきって終わりにしてしまうのは意地悪というものでしょう。(それでも、義務教育修了者なら3年もまじめに取り組めば読めるようになりますから頑張ってください)
それから、日本人による一部の実占書には日本人を占う時ならではのコツが隠されているので、実際に占いをする人にはそうした本の中にある一部の良書を手にできれば学ぶところは大きいでしょう。
さて、日本語のタロットの本といえば、大きく分ければ
(1)日本人の著者によるもの
(2)カードの作者自身によるもの
(3)海外のタロット研究者の翻訳もの
と、言う感じでしょうか。
(1)日本人の著者によるもの
このジャンル(?)ではアレクサンドリア・木星王氏の著作が何と言っても質量ともに充実しているでしょう。氏も86歳、プロ生活約50周年ですが、それでもまだまだお元気に現役、大したものだと感心することしきりです。
10年近く前の著作に「先の長い人生ではない」と書かれていましたが、その後あれだけ毛嫌いしていたインターネットにも登場、インターネット占いまではじめられました。ああした大ベテランがまだまだお元気に第一線にいられるということは何ともうれしいものです。
木星王氏はなんと言っても日本で一、二を争うキャリアの上、ご高齢になられても実占を続けながら本を書かれているのですから、実占的に充実した本が生み出されるのも納得です。
ただ、最近は過去の本の焼き直しばかりが続いているのが残念です。しかし、彼の本の多くが絶版になっている(出版社も倒産しているのが多い)ことを考えると本当の意味で新しい本を読みたい私たちには残念でしかありませんが、かつての良書が手に入らない初心者や今現在30代くらいまでの人には「手に入りやすい」という意味で意味があるのだと思います。
松村潔氏などもタロット関連の著作をいくつも書かれています。ただ、彼の著作は他の分野でもそうですが優秀なキュレーター的なものが多いので、ある意味「色々なものをうまくまとめたもの」という感があります。でも、それはそれで、彼の著作を読むことで初心者が良質のまとめを入手できるのですから、これもまた意味があるものです。
ただ、私の個人的な意見を一つだけ述べれば「クラウド・スプレッド」などのオリジナリティあふれるものは研究としても実占的にもあまり学ぶところがないと思います。
また、トートのタロットについて独自の研究で書かれている伊藤マーリン氏の「ザ・トートタロット」やマンガラ・ビルソン著、伊藤アジータ訳の「直観のタロット(原題省略)」などもありますが、こんなもの(と、言ったら怒られるかもしれませんが)を読むくらいなら「トートの書」を何度も精読熟読すべきだと思います。
最近の日本人の著作によるものとしては尾瀬泉著「タロット物語」は賛否両論出そうですがなかなか面白いものです。小アルカナだけの本ですが、非常に興味深い独自研究をされています。著者が情報工学を学んだ後、セブン―イレブン経由の占い師という人なので、成功哲学などを意識して書かれていますが、そこがこの本のもっとも残念な点です。そんなくだらないものを持ち出したり意識したりせずにもっと純粋にタロットのみに専念して書けば間違いなく「名著」と呼ばれるものになったと思います。しかし、著者自身まだ若い方のようなので今後が楽しみです。
他にも色々な本がありますが、代表的な例を挙げてのまとめにしました。色々な本の細かい書評はまたいつか機会があれば適当に本棚から取り出して書いてみようと思います。
とりあえず今回はここまで。次回はこの続き(2)の「カードの作者自身によるもの」について書こうと思います。
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